個人再生と離婚慰謝料


個人再生と離婚慰謝料債務の関係

個人再生をする場合に、離婚慰謝料がどうなるか心配な方も多いのではないでしょうか。

支払い義務を負っている方は「再生と別枠で返済していけばよいのか」、支払いを受け取る方は「再生によって慰謝料も圧縮されてしまうのか」か等、気になる点があると思います。

そこで、皆様の理解の手助けとなるよう、下記のように項目立ててご説明してみようと思います。

これらについて順に理解していけば、個人再生と離婚慰謝料との関係が分かるようになると思います。

ご参考にしていただければ幸いです。

 

1.そもそも慰謝料とは何なのか

そもそも「慰謝料」とは何なのでしょうか?

「実用日本語表現辞典」にはこうあります。

「違法行為などによって損害を被り精神的苦痛を受けた被害者を慰藉する目的で支払われる、金銭的償い。債務不履行などに対しては『損害賠償』と呼び、精神的苦痛の償いを慰謝料という。離婚や交通事故などにおいて請求されたり支払われたりする場合が多い。」

また、「三省堂大辞林」にはこうあります。

「精神的苦痛に対する損害賠償金。身体・自由・生命・名誉などを侵害する不法行為や債務不履行について請求できる。」

つまり、「慰謝料」とは「損害賠償金」の性質を有しているのです。

もらう人の立場からすれば「損害賠償債権」になり、払う人の立場からすると、「損害賠償債務」になります。

 

2.離婚慰謝料は個人再生とどういう関係にあるのか

離婚慰謝料が損害賠償金の性質を有することが分かりました。

個人再生での債務整理を検討している人に慰謝料支払いの義務がある場合、つまり損害賠償債務を負っている場合は、その慰謝料はどう扱われるのでしょうか。

慰謝料は、「非減免債権」というドアを通して、個人再生の世界と関わりを持つのです。

 

2-1.非減免債権とは

難しい用語ですが、「非減免債権」という用語は民事再生法229条3項の「債務の減免その他権利に影響を及ぼす定めをすることができない」から作られたものです。

個人再生において非減免債権に該当する場合は、その債権は圧縮されず、債権者は自分の債権をカットされずに済むのです。

この非減免債権は3類型に分けられます。民事再生法229条3項に規定されています。

3 第一項の規定にかかわらず、再生債権のうち次に掲げる請求権については、当該再生債権者の同意がある場合を除き、債務の減免の定めその他権利に影響を及ぼす定めをすることができない。

一 再生債務者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権
二 再生債務者が故意又は重大な過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権(前号に掲げる請求権を除く。)
三 次に掲げる義務に係る請求権
イ 民法第七百五十二条の規定による夫婦間の協力及び扶助の義務
ロ 民法第七百六十条の規定による婚姻から生ずる費用の分担の義務
ハ 民法第七百六十六条(同法第七百四十九条 、第七百七十一条及び第七百八十八条において準用する場合を含む。)の規定による子の監護に関する義務
ニ 民法第八百七十七条から第八百八十条 までの規定による扶養の義務
ホ イからニまでに掲げる義務に類する義務であって、契約に基づくもの

繰り返しになりますが、慰謝料は損害賠償の性質を持ちます。

民事再生法229条3項1号と2号を見ていただくと、それぞれに「損害賠償」と規定されています。

この規定から見ても、慰謝料が個人再生の手続と関わりを持つことが導き出されるのです。

 

2-2.再生債権との関係

さて、個人再生では、「再生債権」という用語が使われます。

これは、今回の整理の対象となっている債権(債務者からすると負債)という意味です。

そこで、次に考えるのは、「離婚慰謝料を、この再生債権に含めるのか」という点です。

答えは、「含める」です。

理由は、慰謝料を個人再生手続きから除外してもよいという規定がないからです。

次の段落で説明しますが、その慰謝料が非減免債権に該当する場合は、個人再生によってもその債権額に影響がない、つまりカットされる心配はないのですが、「慰謝料を個人再生手続きから除外してもいいよ」とは言っていないのです。

再生債権というまな板の上に、慰謝料債権も載せてくださいとなるわけです。

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3.離婚慰謝料は個人再生で減額されてしまうのか

ここまでで、慰謝料は個人再生に含めて考えないといけないことが分かりました。

個人再生に含めて考えるとして、その慰謝料が減額されるかどうかが次のポイントになります。

 

3-1.非減免債権に該当しなければ減額される

結論から言いますと、

非減免債権に該当する慰謝料は減額されない、

非減免債権に該当しない慰謝料は減額される、

となります。

 

3-1-1.非減免債権に該当するとき

慰謝料が非減免債権(カットされない債権)に該当する場合は、慰謝料の総額がカットされることはありません。

専門用語で恐縮ですが、「権利変更されない」債権に該当するのです。

但し、一般弁済期間内(個人再生で負債を払う期間のこと)は慰謝料以外の他の負債と同じ基準で支払うことになります。

例をあげると、非減免債権である慰謝料が100万円あったとします。これに対して、債権者から異議がなく評価も済んでいるとします。

3年間に基準債権(最低弁済額を決める基となる債権額のこと)の2割を弁済する計画が認可されますと、一般弁済期間内の3年間に20万円(100万円の2割)を支払い、残り80万円を一般弁済期間終了後に一括して支払うことになります。

慰謝料だけ、別の基準で支払うことは、債権者平等の観点から許されません。

総額は変更されないけど、一定期間中は、他の負債と同じように払ってくださいということになります。

 

3-1-2.非減免債権に該当しないとき

慰謝料が非減免債権(カットされない債権)に該当しない場合は、慰謝料の総額がカットされてしまいます。

つまり、権利変更されてしまうことになります。

先の例で説明しますと、慰謝料が100万円あったとして、3年間に基準債権(最低弁済額を決める基となる債権額のこと)の2割を弁済する計画が認可されますと、一般弁済期間内の3年間に20万円(100万円の2割)を支払い終わると、残り80万円は免責される、つまり支払う必要がなくなります。

 

4.減額されるか、されないか、どうやって決まるのか

実は、個人再生の手続きの中で、慰謝料が非減免債権になるかどうかを判断することはできないのです。

その理由は、

個人再生では手続きの簡易・迅速性が優先されており、再生債権の有無、額及び担保不足見込額の調査をし、それらについての確定はできるのですが、非減免債権に該当するかどうかは「性質」の問題であり、再生手続きの枠内で、その債権が「非減免」の性質を持つか否かの判断をすることはできないからです。

当事者間で決着がつかない場合は、一般弁済期間終了後に別途、裁判(民事訴訟)を起こし、裁判所に非減免債権に該当するかどうかの判断をしてもらうことになります。

 

まとめ

慰謝料債務は損害賠償債務である。

個人再生においては、慰謝料も再生債権に含めて考える必要がある。

慰謝料が非減免債権に該当すれば、カットされないが、該当すればカットされる。

非減免債権に該当するかどうか、最終的には民事訴訟で決着をつける。

 

 

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