リスクもあります/小規模個人再生のデメリット


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小規模個人再生には、クリアしなければならない「大きな壁」があります。

それは、「債権者の同意」です。

債権者の同意が得られないと、再生計画は認可されず、小規模個人再生での債務整理は失敗に終わります。

小規模個人再生の利用にあたり最大のデメリットと言ってもよいでしょう。

本記事では、小規模個人再生に債権者に同意が要求される理由、当事務所で扱ったケース、同意が得られなかった場合どうすればよいか、についてご説明します。

特に、小規模個人再生を検討中されている方に読んでいただければと思っています。

 

 

1.小規模個人再生に債権者の同意が必要な理由

小規模個人再生の場合、どうして債権者の同意が必要になるのか、給与所得者等再生の場合と比較して考えてみます。

計画弁済総額を算出する際の基準に注目します。

 

1-1.計画弁済総額を算出する際の基準

計画弁済総額を算出する際、3つの基準があります。

最低弁済額要件/清算価値保障原則/可処分所得要件

小規模個人再生の計画弁済総額については、この記事も参考にしてください。

 個人再生で支払う金額はいくらになるのか個人再生が認められた場合に支払っていく金額のことを「計画弁済総額」といいます。この計画弁済総額には最低ラインがありまして、「少なくともこれだけは支払ってもらいますよ」と民事再生法が規定している金額があり...

 

給与所得者等再生では、この3つの基準を使って計画弁済総額を出すのに対し、

小規模個人再生では、最低弁済要件と清算価値保証原則の2つしか使いません。

小規模個人再生給与所得者等再生
最低弁済額要件
清算価値保障原則
可処分所得要件

 

1-2.給与所得者等再生

計画弁済総額は、債権者にとって最大の関心事です。

再生計画で、この先、自分がいくら弁済を受けることができるかが決まるわけですからね。

給与所得者等再生では、計画弁済総額を3つの違った観点から検討し、算出します。

基準が多くあるということは、算出された計画弁済総額が正確であり、債権者にとっても公平、公正であるということ意味します。

 

1-3.小規模個人再生

対して、小規模個人再生では最低弁済要件と清算価値保証原則の2つの基準しか用いません。

※関連記事としてこの記事を貼っておきます。

 給与所得者等再生とは個人再生には、「小規模個人再生」と「給与所得者等再生」という2種類の手続きが用意されています。2種類の手続きの相違点については別の投稿で説明することにして、今回ここでは、誰が給与所得者等再生を利用できるかについて説明をし...

 

計画弁済総額算出のための基準が一つ減りました。

減った基準を埋めるため、言い換えれば公平・公正さを確保するためにどうすればよいか?

民事再生法は、小規模個人再生に債権者の同意を必要としたのです。

計画弁済総額がおかしいと思えば、債権者は決議に参加し反対票を投じることで、再生手続きの公平・公正さ確保することにしたのです。

これが、小規模個人再生で債権者の同意が必要となる理由になります。

 

2.決議の具体例/事務所でのケース

小規模個人再生で債権者の同意が必要なのは分かりました。

「同意」の中身はどうなっているのでしょうか?

全員の同意なのか、一部の同意で足りるのか?

 

2-1.民事再生法ではこうなっています

第二百三十条
6  第四項の期間内に再生計画案に同意しない旨を同項の方法により回答した議決権者が議決権者総数の半数に満たず、
かつ、その議決権の額が議決権者の議決権の総額の二分の一を超えないときは、再生計画案の可決があったものとみなす。

再生計画案の決議において、それに同意をしない債権者は、回答期間内に、「同意しない旨」を書面で回答します。

債権者の積極的な同意は要求されていません。

賛成の場合は何もする必要はありません。

ここから、この同意は「消極的同意」と呼ばれたりします。

 

議決権者が議決権者総数の半数に満たず

かつ、

その議決権の額が議決権者の議決権の総額の二分の一を超えないとき

 

に決議をクリアすることができます。

 

言い換えると、

不同意が、議決権者総数の半数以上となり、または、その議決権の額が議決権者の議決権の総額の二分の一を超えた場合はアウトとなります(民再第二百三十七条)。

 

2-2.決議の具体例

具体例で考えましょう。

債権者/議決権者債権額/議決権額
A5万円
B10万円
C15万円
D20万円
E25万円
F76万円
6名合計151万円

債権者がAからFの6名で、A5万、B10万、C15万、D20万、E25万、F76万の債権を持っています。

2-2-1.議決権者が議決権者総数の半数に満たないこと

反対の頭数が議決権者総数の半数以上になるとアウトです。

A、B、Cが反対すればアウトです。

議決権の額は3名合わせて30万円であるものの、頭数が議決権者総数(6名)の半数(3名)以上になるからです。

6名の「半数以上」は3名も含みますから、頭数だけでいうと、2名までの反対ならよかったわけです。

 

2-2-2.議決権の額が議決権者の議決権の総額の二分の一を超えないとき

議決権の額が総額の二分の一を超えるとアウトです。

ここでは、「超える」となっていますから、二分の一ならセーフとなります。

Fが反対すれば、それだけでアウトです。

議決権の総額は151万円で、その二分の一は75万5千円です。

Fの議決権額は76万円で、75万5千円を超えるのでアウトです。

AからEが不同意の回答をしていなくてもダメです。

 

2-2-3.決議のまとめ

まとめると、このケースでは議決権(頭数)は2名まで、かつ、議決権額は75万5千円までなら、不同意の回答があっても、決議はクリアできることになります。

 

2-3.事務所でのケース

当事務所で扱った事例で、今までに、小規模個人再生で債権者から不同意が出たケースは一度もありませんでした。

以下のケースを紹介します。

 

2-3-1.小規模個人再生のケース

債権者数が1社(1名)のケースでした。

頭数でも議決権でも、反対されたら終わりです。

債権者は保証協会でした。

事前に、保証協会側からも破産や再生等、何らかの法的手段を使って解決してもらいたいとの話がありました。

決議はクリアできました。

 

2-3-2.給与所得者等再生を選択したケース

その1
債権者から訴えを起こされており、その金額が議決権の総額の半数を超えるケースでした。
小規模個人再生で進んでも反対が予想されたので、安全策を取り、決議のいらない給与所得者等再生を選択しました。

その2
債権者は1社(1名)で、給与差し押さえをされていました。
小規模個人再生を進んでも反対されればアウトですので、給与所得者等再生を選択しました。

 

3.不同意になった場合どうなるか

民事再生法にはこう規定されています。

第二百三十七条
小規模個人再生においては、第二百三十条第四項の期間内に再生計画案に同意しない旨を同項の方法により回答した議決権者が、議決権者総数の半数以上となり、又はその議決権の額が議決権者の議決権の総額の二分の一を超えた場合にも、裁判所は、職権で、再生手続廃止の決定をしなければならない。この場合においては、同条第七項の規定を準用する。

再生計画案が否決されると、裁判所は、再生手続廃止の決定をします。

下記の記事で、クリアすべき3つの関所と書いたのですが、その第2関門をクリアできなかったことになります。

「小規模個人再生 流れ」で上位表示されるサイトのページを見ると、フローチャートを用いて流れそのものは分かるものの、どこが「肝」なのか今一つピンと来ないのではないでしょうか。小規模個人再生手続きの流れの中で、3つの大きな「関所」があります。この関所...

 

この後どうするかですが、給与所得者等再生でもう一度初めからやり直すか、他の方法(任意整理・自己破産)で出直すかになると思います。

 

まとめ

小規模個人再生を選択する場合、債権者に再生計画案の可否を尋ねなければならない。

否決されることは少ないと言われているが、あくまでもケースごとに考えるべきである。

利用する前に十分な検討をするべきである。

 

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